The Patent Pledge

Paul Graham

特許の誓約

最近、政府の対応を待たずとも、特許をめぐる問題の一部は私たち自身で解決できるのではないかと思うようになった。

特許が技術の進歩を後押ししているのか、妨げているのか、正直いまだによくわからない。子どもの頃は、特許は役に立つものだと思っていた。発明者が大企業にアイデアを盗まれないよう守ってくれるものだと。物理的なモノが中心だった昔は、たしかにそうだったのかもしれない。しかし特許という制度自体が良いか悪いかは別として、使い方には明らかに良くないものがある。そしてそうした悪い使われ方が増えているからこそ、特許制度改革を求める声も高まっている。

特許改革の問題は、どうしても政府を経由しなければならないことだ。そうなると動きは遅くなりがちだ。だが最近、別の角度からこの問題に手をつけられることに気づいた。特許が発行されるという上流で流れを絞るだけでなく、下流、つまり特許が使われる場面で流れを絞ることも、場合によっては可能なのだ。

イノベーションを明らかに妨げる特許の使い方がある。大手企業が、出来の悪い自社製品を守るために特許を武器にして、優れた製品を持つ小さな競合を潰すようなケースだ。こうした濫用こそ、政府を介さずとも減らせる可能性がある。

やり方はシンプルだ。こうした手口とは無縁でいる企業に、そうしないことを公に誓ってもらうのだ。そうすれば、誓約に応じない企業がはっきりと浮かび上がる。優秀な人材はそこで働きたいと思わなくなるだろうし、投資家から見ても、良い製品で勝負するのではなく訴訟で競争しようとする会社なのだとわかるようになる。

誓約の文面はこうだ。

従業員25人未満の企業に対し、ソフトウェア特許を先制して行使しない。

わざと厳密さより簡潔さを優先した。この特許の誓約に法的な拘束力はない。Googleの「Don't be evil(邪悪になるな)」のようなものだ。Googleは「邪悪」の定義を示してはいないが、この言葉を公に掲げることで、たとえばAltriaのような会社とは違う基準で自らを律する覚悟があると宣言している。そして制約ではあるものの、「Don't be evil」はGoogleにとってプラスに働いてきた。テクノロジー企業は、最も生産的な人材を惹きつけることで勝つ。そして最も生産的な人材は、法律で求められる以上の高い基準を自らに課す雇用主に惹かれるのだ。1

特許の誓約は、言ってみれば、より対象を絞ったオープンソース版の「Don't be evil」だ。すべてのテクノロジー企業に、この誓約を採用することを勧めたい。特許の問題を少しでも良くしたいと思うなら、ぜひ自分の会社にも働きかけてほしい。

そもそも大半のテクノロジー企業は、スタートアップ相手に特許を持ち出すような真似はしない。GoogleやFacebookが特許侵害でスタートアップを訴える姿など見たことがない。そんなことをする必要がないからだ。だから優れたテクノロジー企業にとって、この誓約は行動を変えることを求めるものではない。いずれにせよやるはずのことを、そうすると約束するだけだ。そしてスタートアップに特許を使わない企業が皆そう宣言すれば、宣言しない企業は否応なく目立つことになる。

特許の誓約が、特許をめぐるすべての問題を解決するわけではない。たとえばパテント・トロールを止めることはできない。彼らはすでに社会ののけ者だからだ。しかし、この誓約が対処する問題は、パテント・トロールの問題よりも深刻かもしれない。パテント・トロールは単なる寄生虫だ。不器用な寄生虫がたまに宿主を殺してしまうことはあっても、それが目的ではない。一方で、特許侵害でスタートアップを訴える企業は、相手の製品を市場から排除すること自体を明確な目的としてやっているのだ。

スタートアップに対して特許を使う企業は、イノベーションの根を断っているのだ。もはや政府を待たずとも、誰もがこの問題に対してできることがある。企業に対して、あなたはどういう立場なのかと問うことだ。

特許の誓約サイト

注記:

1 誓約は意図的にあいまいにしてあるので、解釈する際には常識が必要になる。そして逆もまたしかりだ。そもそも人々に常識で判断してもらうために、あえてあいまいな表現にしているのだ。

たとえば、25人というのが正社員に限るのか、業務委託も含むのかについて、あえて明記していない。訴訟が誓約に違反するかどうかをそんな細かい点で言い訳しなければならないような状況であれば、それはどのみち褒められた真似ではないだろう。

原文は Paul Graham により に公開されました。

この記事は「muse-spark-1.2-contributor」を使用して翻訳されました。