TinyPilot:39か月目
一言でまとめると
製造の遅延への対応
初めての方はこちら
こんにちは、Michaelです。ソフトウェア開発者で、独立系コンピューターハードウェア企業であるTinyPilotの創業者です。2020年に創業し、現在は月商8万〜10万ドル、従業員は私のほかに6名います。
毎月、こうした振り返りを公開して、ビジネスや仕事全般の状況を共有しています。
ハイライト
- 製造元の遅延への対応を進めています。
- TinyPilotのオフィスをあと2か月維持することにしました。
- RapidAPIでの散々な販売者体験から脱出しようと計画しています。
目標の達成度
毎月初めに達成したい目標を宣言しています。達成度は次のとおりでした。
製造をできるだけ早く委託先へ移管する
- 結果:可能な限り製造元のボトルネック解消に取り組んでいます。
- 評価:A
正直なところ、私の側でできることはあまりありませんでした。ボトルネックは製造元の仕入れ先からの出荷にありました。
TinyPilotオフィスの整理・退去に関するタスクを委任する
- 結果:オフィスの在庫確認と整理のタスクを割り振りました。
- 評価:B-
製造の遅延により、オフィスにあと2か月残ることにしましたが、10月末までに在庫の大部分は整理できる見込みです。
残りのRaspberry Piをすべて使い切ってTinyPilotデバイスを組み立てる
- 結果:新品・整備品のデバイス製造にすべてのRaspberry Piを使い切りました。
- 評価:A
組み立ては計画どおりに進み、すべての新品デバイスは倉庫に届いています。整備品デバイスも今後数週間で売り切る見込みです。
TinyPilotの数値
| 指標 | 2023年8月 | 2023年9月 | 前月比 |
|---|---|---|---|
| ユニーク訪問者数 | 6,900 | 6,200 | -700 (-10%) |
| 販売売上 | $91,670.46 | $83,380.02 | -$8,290.44 (-9%) |
| 法人向けサブスクリプション | $290.70 | $290.70 | 0 |
| ロイヤリティ | $2,969.62 | $2,056.30 | -$913.32 (-31%) |
| 総売上 | $94,930.78 | $85,727.02 | -$9,203.76 (-10%) |
| 利益 | $28,454.42 | $8,644.82 | -$19,809.60 (-70%) |
売上は少し落ちましたが、月8万ドル±1万ドルが平常運転なので、あまり心配していません。今の最優先は製造移管を着実にやり切ることです。
短期的な利益が落ち込んでいるのは、今月Raspberry Piを3か月分まとめて支払ったためです。ただし3か月移動平均の利益は依然として月2万ドルを十分に上回っており健全です。
ファーストアーティクルサンプルの不具合修正
9月に、製造委託先からファーストアーティクルサンプルが届きました。委託先の工場で製造されたVoyager 2aの、通しでの最初の生産サンプルです。
残念ながら、出来はあまり良くありませんでした。
4台中2台で塗装が剥がれ、3台でゴム足が外れていました。1台は内部の配線が外れており、音声のキャプチャができませんでした。デバイスを横に傾けると、ファンがケースに擦れる音がしました。


ファーストアーティクルサンプルでは、輸送中に塗装の剥がれやゴム足の脱落が発生しました。
サンプルの不具合は気がかりでした。
まず、小ロットのサンプルでこれだけ多くの問題が出たことです。本来は量産能力を示すためのサンプルのはずです。
次に、組み立て工程だけでなくQA(品質保証)にも問題があることが示唆されたことです。独立したQAチェックで、塗装の剥がれや音声が機能しないといった問題をなぜ見逃したのでしょうか。
CEOと話したところ、製造元ではこのロットに「念入りな」QAを実施したものの、その追加チェックがかえって新たな不具合を生んでいたことが分かりました。
CEOによると、現場を担当していたマネージャーが、金属筐体の指紋を拭き取るためにアルコール綿でデバイスを拭いたところ、塗装が剥がれてしまったとのことでした。現在はケースへのアルコール拭きを禁止し、指紋が付かないよう手袋をして組み立てるように工程を改めています。
また、マネージャーがQA後にデバイスを開けた際に誤って配線を外してしまった可能性があるとのことで、現在は機能テスト完了後にデバイスを開けることを禁じるようQA工程が改定されています。
ゴム足の脱落については、梱包が原因とみられています。箱が足の最も弱い部分に負荷をかけていたためで、梱包方法を修正して対策しています。
それでもQA手順について認識の齟齬が残っていないか少し不安だったので、製造元にQA作業の動画を送ってもらいました。幸い、私たちの手順と一致していたので、大きな問題は潰せたのではないかと期待しています。
製造スケジュールの遅れにどう対応するか
当初の製造スケジュールでは、最初の量産ロットは9月15日に受け取れる予定でした。当時は手元の在庫が10月末まで持つと見積もっており、遅延に備えて6週間のバッファがある計算でした。
しかし、その安全在庫を使い切ってしまい、最初の量産ロットが用意できる前に在庫切れを起こすリスクが出てきました。
在庫を切らすと販売を止めなければなりません。前回在庫切れを起こしたのは2022年1月の4日間、その前は2021年1月の1日間でした。私は在庫切れが大嫌いです。
スケジュールの遅れを踏まえ、在庫切れのリスクを下げるためにどんな選択肢があるか検討しています。
前提条件
- TinyPilotは月200台、週あたり約50台を販売しています。
- 在庫切れが1日続くごとに、約3,000ドルの売上と約2,000ドルの利益を失います。
現行スケジュールはどうなっているか
10月16日時点で手元に164台あり、11月8日ごろに在庫が尽きる計算です。整備品が8台あるので、あと2日ほど延命でき、完全に売り切れるのは11月10日と見ています。
製造元の現時点の見込みに基づく供給スケジュールは次のとおりです。
| 日付 | 内容 | 所要日数 |
|---|---|---|
| 10月19日 | ベトナムからマサチューセッツへ第2サンプルを発送 | 7日間 |
| 10月26日 | 第2サンプルを検品 | 1日間 |
| 10月27日 | 小ロットを製造 | 4日間 |
| 10月31日 | ベトナムからマサチューセッツ(TinyPilotオフィス)へ小ロットを発送 | 7日間 |
| 11月7日 | 小ロットを検品 | 2日間 |
| 11月9日 | 大ロットを製造 | 4日間 |
| 11月13日 | ベトナムからノースカロライナ(倉庫)へ大ロットを発送 | 7日間 |
| 11月20日 | 大ロットの出荷準備が完了 | 1日間 |
この見込みどおりなら、在庫切れはぎりぎり回避できます。大ロットが利用可能になるのは11月20日ですが、それまでのつなぎとして小ロットがしのいでくれます。
第2サンプルをスキップすべきか
最初の問いは、次回を最小限のサンプルにするか、顧客に発送できる規模のロットにするかです。
第2サンプルを省いた場合、スケジュールは次のようになります。
| 日付 | 内容 | 所要日数 |
|---|---|---|
| 10月19日 | ベトナムからマサチューセッツ(TinyPilotオフィス)へ小ロットを発送 | 7日間 |
| 10月26日 | 小ロットを検品 | 1日間 |
| 10月27日 | 大ロットを製造 | 4日間 |
| 10月31日 | ベトナムからノースカロライナ(倉庫)へ大ロットを発送 | 7日間 |
| 11月7日 | 大ロットの出荷準備が完了 | 1日間 |
初回ロットで本当に致命的だったのはケースの塗装剥がれだけでした。それ以外は、私たちのオフィスで修理可能な問題でした。
可能性は次のように整理できます。
- 楽観シナリオ(85%の確率):第2サンプルでも新たな問題は見つからず、量産ロットが2週間早く用意できる。
- 悲観シナリオ(15%の確率):50台以上をベトナムへ返送する必要がある。
結論:サンプルはスキップする。代わりに、前回の問題が解消されたことを示す写真と動画の提出を求める。残る問題があっても私たち側で修理できる可能性が高く、2週間の遅れはコストが大きすぎるためです。
自社で追加製造すべきか
委託先への移管を待たずに自社で追加製造すれば、在庫をもう少し持たせることはできます。TinyPilotは何年も自社で製造してきたので、対応自体は可能です。ただ、製造ラインを再稼働させるにはいくつか厄介な問題があります。
最も大きな問題は、依然としてRaspberry Piが不足していること、そしてTinyPilotが保有するPiはすべて製造委託先にあることです。
近いうちに入荷予定があるので、その出荷先を米国の住所に振り替える手もあります。ただ、Raspberry Pi Foundationに頼み込んでようやく配送先をベトナムに変更し、通関書類も整えたところなので、1回のためだけに再変更をお願いすると、今後の注文でミスが起きるリスクがあります。しかもRaspberry Piは1箱150台単位でしか注文できません。
ベトナムの工場にあるRaspberry Piは私たちの所有物なので、製造元に一部を送り返してもらうこともできます。任意の数量を頼めますが、英国製の製品をベトナムから米国へ送るとなると、こちらも通関で面倒が起きそうです。
たとえPiを確保できても、ほかの部品が足りません。中国の旧取引先にカスタム基板(PCB)を発注する必要があります。納期は通常1か月ほどで、単価も1枚あたり約2ドルなので、費用面はそれほど問題ではありません。
次に厄介なのがケースです。旧ケース取引先はリードタイムを常に6週間と主張していましたが、実際はだいたい3か月かかっていました。そのため、今から頼んでも間に合わない可能性があります。中国の工場には出荷待ちのケースが80個ありますが、Raspberry Piの数以上にケースがあっても意味がないので、出荷を保留するようお願いしてあります。
有効なタイムラインで追加のケースを入手できないため、自社で作れても最大80台が上限です。
つまり、可能性は次のとおりです。
- 楽観シナリオ:これ以上の遅延はなく、新工場で作れたはずのデバイスをわざわざ時間とコストをかけて作ることになる。
- 悲観シナリオ:さらに遅延が発生し、自社製造によって10日分長く販売を続けられる。
結論:自社での追加製造はしない。最大でも在庫を10日延ばすためだけに、多くの時間とコストをかけるのは見合わないためです。
販売ペースを落とすべきか
自社製造でバッファを延ばすほかに、TinyPilotの販売ペースを落とす方法が2つあります。
1つ目は値上げです。価格を上げれば販売台数は減りますが、全体の利益は下がる可能性が高いです。
2つ目は広告費の削減です。さばききれない注文を受けるために広告費を払う意味はありません。
ここでの可能性は次のとおりです。
- 楽観シナリオ:製造の遅延はなく、販売を意図的に絞ったことで3,000〜5,000ドルの利益を取りこぼす。
- 悲観シナリオ:さらに遅延が発生し、販売を絞ることで無駄な広告費や安値での販売による利益の目減りを防げる。
結論:現時点では販売ペースは落とさない。ただし、さらに遅延が生じたり次回検品で問題が見つかったりした場合は再検討します。
最初のロットは何台発注すべきか
約400台のフルロットを作る前に、手作業で検品できる小ロットを入れたいと考えています。
次のロットが届くまでのバッファになる程度の数量が必要です。
仮に次のロットがベトナムからノースカロライナの倉庫へ届き、出荷可能になるまで10日かかるとします。10日分なら約66台が必要です。1箱18台入りで出荷されるので、72台必要という計算になります。
結論:小ロットは72台発注する。
フルリモートへの移行をスローダウンする
製造元のスケジュール遅延を受け、10月末までにTinyPilotの地元オフィスを退去する計画に不安を覚えました。
オフィスがなければ、サンプルの検品や必要に応じた修理といった作業がずっと難しくなります。
ファーストアーティクルサンプルを見た翌日、大家に電話して契約延長を頼みました。幸いまだ募集に出していなかったため、年末まで残れることになりました。
大きな変更が同時に重なるのを緩和できるので、この決定には満足しています。オフィスなしで残りの対面業務をどう回すか再設計する前に、まずは新しい製造ラインをしっかり軌道に乗せたいと思います。
サイドプロジェクト
RapidAPIから移行しなければ……意地でも
Jerry:このジャケットを返品したいのですが。
店員:かしこまりました。理由をお聞かせいただけますか?
Jerry:意地です。
店員:意地、ですか?
Jerry:そうです。これを売った店員が気に食わないのです。
『となりのサインフェルド』「ウィッグ・マスター」より
ブートストラップで独立した当初に手がけた最初のプロジェクトの一つが、食材解析APIのZestfulです。何年も前からメンテナンスモードですが、今でも月100〜200ドルの不労所得を生んでいます。
問題は、Zestfulの有料顧客がRapidAPI経由でサービスを利用していることです。RapidAPIは私がこれまで使った中で最悪のプラットフォームの一つです。当初ZestfulはMashapeというプラットフォームで公開しており、使い勝手は悪くなかったのですが、RapidAPIがMashapeを買収してから体験はがた落ちになりました。
RapidAPIでは語り尽くせないほど多くの問題を抱えてきましたが、最大の問題は従量課金の扱いのひどさです。私はZestfulで食材1件の解析につき0.02ドルを課金しています。不可解なことに、RapidAPIはユーザーが発生させた料金を請求サイクルの末日までレポートしないのです。
当然、RapidAPIの課金システムは顧客を混乱させます。Zestfulに大量のリクエストを送っても請求額が0ドルのままなので、まだ無料枠内だと思い込み、使い続けた結果、数百〜数千ドルの驚きの請求書が届き、支払いを拒否するのです。
2か月前、とりわけひどいケースがありました。あるユーザーが数千ドル分の料金を積み上げているのに気づいたので、プラットフォームのメッセージ機能で知らせ、節約になるカスタムプランを提案しました。しかし無視され、最終的な請求額は1万4,500ドルになりました。RapidAPIが1か月後にクレジットカードへ請求したところ、決済は拒否されました。

RapidAPIは、顧客が1万4,000ドルもの料金を積み上げるのを許し、数週間後になってようやく請求を試みました。
RapidAPIはこの事態に何の対応もしません。再請求もせず、アカウントの停止すらしません。ユーザーはそのまま私のサービスに対して料金を積み上げ続け、支払わずに済んでしまうのです。
RapidAPIがかなり放任主義だからといって、手数料が格安だと思われるかもしれません。PaddleやLemonSqueezyのような類似プロバイダーは売上の5%を手数料としています。
ところがRapidAPIはなんと売上の20%も取ります!
実質的にはそれ以上です。RapidAPIは支払いをPayPal経由でしか行わず、PayPal側でも1取引ごとに3% + 0.30ドルの手数料がかかるからです。しかも信じがたいことに、RapidAPIは顧客ごとに別々に支払いを行います。つまりRapidAPIに5人の顧客がいれば、5回に分けて支払いが行われ、PayPalの手数料も5回分取られるのです。RapidAPIからの入金で、手数料で最大80%を失ったこともあります。
ここまでRapidAPIを我慢してきたのは、Zestfulを週末の趣味プロジェクトと割り切り、新しい決済プロバイダーへの移行を趣味として楽しめるとは思えなかったからです。
今は、RapidAPIへの意地だけでPaddleやLemonSqueezyを試し始め、RapidAPIから解放されようとしています。月15ドルを節約するために開発時間を費やす価値が本当にあるわけではありませんが、RapidAPIにお金を払い続けるのはもうごめんですし、今後気に入って使えるSaaS向け決済ゲートウェイに慣れておくのは有益です。

「SaaS決済ゲートウェイを乗り換える理由は何ですか?」
まとめ
できたこと
- 委託製造元のファーストアーティクルサンプルを評価した。
- 製造プロセスでの想定外に対応した。
- オフィスに残っていた新品・中古のRaspberry Piをすべて活用した。
学んだこと
- 複雑な意思決定は書き出す。
- この振り返りを書き始めた当初は、製造の遅れにどう対応すべきか明確な考えがありませんでした。しかし状況を文章で説明するうちに、答えるべき問いがいくつもあることに気づき、検討事項とリスクを書き出すことで意思決定が容易になりました。
来月の目標
- 製造をできるだけ早く委託先へ移管する。
- TinyPilotのソフトウェアリリースプロセスの手作業を減らす。
- TinyPilot Proライセンスの取り締まり強化に向けた計画を作る。
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