TinyPilot:35ヶ月目
原文は Michael Lynch により に公開されました。 このブログを購読する
一行まとめ
25万ドルの現金をどうやって用意すればいいのか?
ハイライト
- 大きな出費に必要な25万ドルを必死に工面しようと奔走した。
- 製造委託先への切り替えが財務にどう影響するかを検証した。
- 3PLベンダーへのアウトソースは想定より安く済んだ。
目標の達成度
毎月月初に、その月に達成したいことを宣言している。目標に対する結果は次のとおりだ。
新しいTinyPilot社員のオンボーディング
- 結果:新しい社員は完全に戦力化した。
- 評価:A
TinyPilotの新しい社員は研修を終え、Voyager 2aを組み立てられるようになった。人員が増えたことで、在庫に追われる状態から脱し、余裕を持って対応できるようになってきた。
想定していなかったのは、3人になるとオフィスのスペースがボトルネックになることだ。週20時間勤務の2人なら、勤務時間が重ならないので1つのオフィスを楽に共有できた。3人になると、スペースが足りないというほどではないが、シフトが衝突しないようにもっと計画的に調整する必要が出てきた。
売上9万ドルを達成する
- 結果:売上9万2000ドルを達成した。
- 評価:A+
製造能力の制約がなくなったので、広告費を増やし、Amazonの商品ページを修正した。
Amazonの問題は、TinyPilotの商品ページに再び「購入」ボタンを表示させる唯一の方法が、Amazonでの価格を自社サイトの価格まで下げることだった点だ。その結果、顧客は自社サイトよりもAmazonを選ぶインセンティブが強くなり、Amazon経由の購入の割合が増え、Amazonに支払う手数料も増えている。
TinyPilot Voyager 2aをレビューしてくれるホームラボ系ブロガー/YouTuberを3人見つける
- 結果:レビューに興味を持ってくれた人は2.5人だった。
- 評価:B+
3人のYouTuberに声をかけた。うち2人は興味を示し、動画でTinyPilotを紹介する予定だ。残りの1人はレビューはやっていないが、使い道が見つかればカメオ出演的に紹介してもいいと言ってくれている。
TinyPilotの統計
| 指標 | 2023年4月 | 2023年5月 | 変化 |
|---|---|---|---|
| ユニーク訪問者数 | 6,560 | 7,773 | +1,213 (+18%) |
| 総ページビュー数 | 15,034 | 17,220 | +2,186 (+15%) |
| 販売売上 | $82,060.84 | $89,569.49 | +$7,508.65 (+9%) |
| エンタープライズサブスクリプション | $290.70 | $290.70 | 0 |
| ロイヤリティ | $2,369.08 | $2,597.71 | +$228.63 (+10%) |
| 総売上 | $84,720.62 | $92,457.90 | +$7,737.28 (+9%) |
| 利益 | $10,295.55 | $24,034.74 | +$13,739.19 (+133%) |
今月はすべての数値が伸びており、良い兆候だ。まだTinyPilotの月ごとの変動の範囲内ではあるが、全体的なトレンドは上向きだ。
閲覧数と売上の増加は、主に広告への投資を増やしたことによるものだ。今後数ヶ月でVoyager 2aをさらに多くのブロガーやYouTubeクリエイターに送り、さらに伸ばしていきたい。
25万ドルの現金をどうやって用意する?
TinyPilotの次の大きなタスクは、自社での製造プロセスを製造委託先に移管することだ。
5月初旬、数ヶ月前から話をしていた製造委託先との交渉が見積もりの段階まで進んだ。Voyager 2aをRaspberry Piを除くすべて込みで1台あたり約110ドルで作れるという。Raspberry Piは1台45ドルなので、合計で1台あたり約155ドルになる。
現在の私のコストは、材料費が1台あたり約110ドル、そこに人件費が1台あたり5ドルほどだ。つまり製造委託先にすると1台あたり40ドル(35%)のコスト増になるが、それでもやる価値はあると感じた。製造委託先を使えば、物理的なオフィスを維持する必要がなくなり、原材料の在庫管理も不要になり、人を雇わずに簡単に生産規模を拡大できるからだ。
1台110ドルという単価には納得していたのだが、合計金額を計算して考えが変わった。製造委託先は最低2000台の発注を求めていた。110ドル × 2000台 = 22万ドルだ!
最初のロット分のRaspberry Piを含めると、この発注を支払うために約25万ドルの現金を用意する必要がある。
はっきり言っておくと、これはいずれにせよ使うお金だ。昨年は原材料だけで33万4000ドルを使ったが、年間を通して少しずつ支払っていた。製造委託先に切り替えることで、材料費と製造コストの大部分をまとめることになるが、6〜8ヶ月分を一括で支払うことになるのだ。
いったいどこで25万ドルもの現金を用意すればいいのか?
ShopifyやAmazon、Mercuryからはeコマース向け融資の勧誘がひっきりなしに届くので、今回初めて詳細を読んでみた。月商の何倍かを融資し、5〜15%の組成手数料を取り、さらに完済するまで売上の10〜20%を徴収し続けるという仕組みだ。

Shopifyからは10万ドルの融資に対して1万3000ドルの組成手数料という条件を提示された。
もしShopifyから10万ドルを借りれば、手数料は1万3000ドルかかり、返済には約7ヶ月かかる。ただ、それは私が必要とする期間より長い。月商は約9万ドルだ。もし材料費と製造費をすべて支払い済みなら、経費は月2万5000ドル程度で済み、現金の利益は月6万5000ドル残る。融資が必要なのは1〜2ヶ月だけなので、1万3000ドルはやや高すぎる。
銀行から融資を受けることもできると思うが、かなり時間がかかり、書類仕事も膨大なのだろう。手数料も数千ドルはかかるはずだし、そもそも普通の銀行が2ヶ月だけの融資をしてくれるとは思えない。
この状況で、10代の頃の出来事を思い出した。不動産デベロッパーが私の大好きなコミュニティセンターを取り壊してショッピングモールを作ろうとしていた。私のブレイクダンスクルーが素晴らしいダンスショーを披露したところ、観客から20万ドルの寄付が集まり、コミュニティセンターを守るのに必要な金額をちょうど工面できたのだ。
昔のダンスクルーの仲間であるアルに電話して、TinyPilotのためにもう一度ブレイクダンスショーをやらないかと誘ってみた。すると彼はイライラした様子で、僕らは二人ともブレイクダンスなんて全く知らないし、それは80年代の映画Breakin’ 2: Electric Boogalooの筋書きそのままだと指摘してきた。

ブレイクダンスショーで必要な資金を集められるだろうか?
というわけで、その案は却下になった。
次の製造委託先とのミーティングで、CEOに25万ドルを前払いしなくて済むような契約の組み方はないかと尋ねた。それは私にとってほぼ1年分の経費に相当する金額だと付け加えて。彼は笑って、全額を一括で求めているわけではないと説明してくれた。
製造委託先は初期費用を立て替える意向があることがわかった。1年以内に2000台すべてを購入するという注文書にサインさえすれば、その条件で十分だという。
そこで、まずはVoyager 2aを約500台から始めることになりそうだ。そうなると製造委託先に支払うのは約5万5000ドル。Raspberry Pi代としてさらに3万4000ドルはかかるが、初期費用の合計は約9万ドルで済む。ずっと飲み込みやすい金額だ。
製造委託先への切り替えは財務にどう影響する?
25万ドルという数字を計算したとき、一時的な巨額の出費がTinyPilotの財務をめちゃくちゃにするのではないかと少しパニックになった。だが、全額を前払いする必要はないとわかって、製造委託先への切り替えは今の体制よりも財務的にプラスになると気づいた。
キャッシュフロー
TinyPilotの現在の体制では、材料費や製造コストが数ヶ月、時には数年にわたって分散している。例えば2022年2月には、重要な電子部品を備蓄するために2万ドルを使ったが、その在庫を今も使い続けている。つまり2万ドルが14ヶ月以上も拘束されたままだということだ。
電子部品の備蓄は回収期間が最も長いが、TinyPilotには他にも何ヶ月も現金を拘束する支出がいくつかある。金属ケースは、受け取る3ヶ月前に30%を頭金として支払い、残りの70%は出荷準備ができた時点で支払う。ケースは一度に1000個単位で届くので、すべてをデバイスに組み立てるだけで3ヶ月かかる。つまりケースの費用をデバイスの販売で回収するまでに4〜6ヶ月かかることもあるのだ。
製造委託先の場合は、出荷から30日後に支払えばいい。材料費を支払ってから完成品を販売して利益を得るまでの期間がずっと短くなる。注文品が1週間で倉庫に届けば、支払い期限までに3週間近く完成品を販売する期間がある。
コストの追跡
今の体制では、特定のTinyPilotデバイス1台を作るのにかかったコストを追跡するのが難しい。
例えば先ほど触れた2万ドル分の電子部品のロットでは、生産の各段階で利用可能にするまでに、途中でたくさんの追加コストがかかっている。
| 費用 | コスト(記憶に基づく) |
|---|---|
| 部品を米国に輸入する際の関税 | $5,000 |
| 初期生産ロットのために部品をハードウェアコンサルタントに発送した費用 | $300 |
| 製造業者へ発送するための部品の在庫管理費用 | $750 |
| 部品を中国の製造業者へ発送し、再び関税を支払った費用 | $1,200 |
中国の製造業者に届いた後は、部品を基板(PCB)に組み立てる費用を支払った。製造業者は基板を米国に発送し、そこでまた関税を支払った。さらに基板や他の部品をVoyager 2aに組み立てるための人件費もかかる。
では、特定のVoyager 2a 1台を作るのにいくらかかったのか?各コストを特定の部品ロットに紐づける方法があれば計算できるはずだが、そこまで詳細に追跡できる仕組みは持っていない。
製造委託先に移行すれば、製造コストはたった3つの費用に集約される。
- 製造委託先に支払う1台あたりの単価。
- Raspberry Piの1台あたりの単価。
- 製造業者からフルフィルメント倉庫までの送料。
製造委託先の工場はベトナムにあり、米国にはベトナム製の電子機器に対する輸入関税が本来はないとされている。「本来は」と言うのは、実際に輸入手続きを経験するまで確信を持たずにおきたいからだ。もし本当に関税がかからないなら、また一つ大きな出費がなくなり、コスト管理はさらにシンプルになる。
3PLベンダーはいくらかかる?
TinyPilotの今年の主要なプロジェクトの一つは、注文のフルフィルメントを自作の仕組みからサードパーティ物流(3PL)ベンダーへ移行することだった。
TinyPilotの唯一の創業者として、私は主に時間に制約されている。3PLに移行すればTinyPilot内部で起きることの複雑さが減るので、ぜひ切り替えたいと思っていた。その価値を考えると、3PLベンダーには1注文あたり20ドル程度かかるだろうと予想していたが、実際はもっと安かった。
3PLにすべての注文を任せた最初の1ヶ月のコスト内訳は次のとおりだ。
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| TinyPilotから3PLへの発送 | $560 |
| 倉庫保管料 | $28 |
| ソフトウェアライセンス料 | $45 |
| 在庫受け入れ作業 | $288 |
| 注文のピッキング | $336 |
| 連絡対応 | $72 |
| 決済手数料 | $10 |
| 合計(送料・梱包材を除く) | $1,585(1注文あたり$8.86) |
| 梱包材 | $223 |
| 送料 | $2277 |
| 合計 | $4,085(1注文あたり$22.82) |
送料と梱包材は、どちらにせよかかる費用なので分けて記載した。3PLは15%(1注文あたり約1ドル)のマージンを上乗せするため、わずかに高くなっている。
合計すると、3PLのコストは送料と梱包材を除けば1注文あたり約9ドルで、予想より安かった。自社でやるよりは高いが、オフィスが不要になることに近づくので、月750ドルほどの経費削減になる。
3PLを使うとキャッシュフローも少し改善する。TinyPilotが自社でフルフィルメントをしていたときは、梱包材は前払いし、人件費と送料は発生のたびに支払わなければならなかった。3PLでは月末に請求書が届き、支払いは1ヶ月後でいい。つまり5月1日に3PLが処理した注文については6月30日に支払えばいいので、3PLによってTinyPilotは現金をより長く手元に置いておけるのだ。
サイドプロジェクト
WanderJestのポスター生成機能
2020年初頭に、WanderJestという、コメディファンがライブコメディを見つけやすくするためのビジネスを作った。COVIDで店じまいしたが、ここ数ヶ月は週末にいじっている。
ライブコメディの公演をリストアップする際の問題は、作業が手間だということだった。公演の主催者はたいていFacebookやEventbriteなどで公演を告知するのだが、どちらのプラットフォームもデータを自動で取得するツールに対して積極的に排他的だ。WanderJestに公演情報を載せるには、他のプラットフォームを見て手作業ですべての詳細をコピーしなければならなかった。
コメディアン自身に自分の公演情報を入力してもらえるようにしたかった。余計な手間がかかるなら誰もやってくれないので、コメディアンがすでにやっている作業をWanderJestでより良くし、その副産物として公演情報を取得できないかと考えてきた。
コメディアンがSNSで今後の公演リストを画像で投稿しているのをよく見かける。

見たところ、コメディアンたちは汎用の画像編集ツールを使って手作業でこれらの画像を作っているようだ。公演の詳細が変わると、前の画像の上に不器用に編集を重ねていることもあり、おそらく元のデータを編集して作り直す方法がないのだろう。
そこで、これらの画像を作るための専用ツールを考えた。コメディアンのデータを保存しておけるので、後から編集して、スケジュールに公演が追加されるたびに更新した画像を生成できる。
汎用ツールより使いやすく、より良い出力が得られるなら、コメディアンは使ってくれるはずだ。WanderJestへの流入にもつながり、公演情報を得る手段にもなる。
ある土曜日にブラウザAPIの<canvas>要素について学び、急いでこのプロトタイプを作った。
WanderJestのコメディアン向けポスター生成機能のデモ
何度か会ったことのあるコメディアンがいて、彼女がこういう画像を投稿しているのを見たことがあった。Facebookでメッセージを送ってツールを見せたところ、「素晴らしい!」と言ってくれた。ところが翌日、彼女はまた汎用の画像編集ツールで作った今後の公演画像を投稿していた…。
というわけで、まだ導入してくれた人はいないが、あと数人のコメディアンに試してみてから諦めるかどうか決めようと思う。
まとめ
できたこと
- 新しいTinyPilot社員のオンボーディングを完了した
- 3人のYouTubeクリエイターにTinyPilotについて連絡した
- Fly.ioでSyncthingをデプロイするチュートリアルを公開した
学んだこと
- アウトソースベンダーに切り替える際は、コストとキャッシュフローの両方への影響を考えること。
- 3PLではコストは上がったが、キャッシュフローもわずかに改善した。
- 製造委託先では、製造コストはより一時的に集中するが、キャッシュフローは大幅に改善する。
来月の目標
- 新しい製造委託先で製造ロットを開始する。
- TinyPilot Pro 2.6.0を公開する。
- 売上9万5000ドルを達成する。
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