TinyPilot:35ヶ月目
一言でまとめると
25万ドルの現金をどうやって用意するのか?
ハイライト
- 大きな出費のために、25万ドルをかき集めようと必死になりました。
- 製造を外部委託に切り替えると収支がどう変わるのかを検証しました。
- 物流代行(3PL)への外注は、想定よりも安く済みました。
目標の達成度
毎月のはじめに、その月に達成したいことを宣言しています。結果は次のとおりでした。
TinyPilotの新メンバーをオンボーディングする
- 結果:新メンバーは完全に独り立ちしました。
- 評価:A
TinyPilotの新メンバーは研修を終え、Voyager 2aを組み立てられるようになりました。人員が増えたことで、注文に追われる状態から脱し、在庫に余裕を持てる感覚が戻ってきました。
想定していなかったのは、3人体制になるとオフィスのスペースがボトルネックになることです。週20時間勤務の2人なら、勤務時間が重ならないため1つのオフィスを楽に共有できました。3人になると、まだ深刻な問題というほどではありませんが、シフトが重ならないよう事前に調整が必要になります。
売上9万ドルを達成する
- 結果:売上9万2千ドルを達成しました。
- 評価:A+
製造能力の制約がなくなったので、広告費を増やし、Amazonの商品ページも修正しました。
Amazonの問題は、TinyPilotの商品ページに再び「カートに入れる」ボタンを表示させる唯一の方法が、Amazon上の価格を自社サイトの価格まで下げることだった点です。その結果、お客様は自社サイトよりもAmazonを選ぶ動機が強くなり、Amazon経由の購入の割合が増え、Amazonに支払う手数料の負担も大きくなっています。
ホームラボ系のブロガーやYouTuber3名にTinyPilot Voyager 2aのレビューを依頼する
- 結果:2.5名からレビューへの関心を得られました。
- 評価:B+
3名のYouTuberに声をかけました。うち2名は関心を示し、動画でTinyPilotを取り上げる予定です。残りの1名はレビュー自体は行っていませんが、使い道が見つかればさりげなく紹介してもよいとのことでした。
TinyPilotの数値
| 指標 | 2023年4月 | 2023年5月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| ユニーク訪問者数 | 6,560 | 7,773 | +1,213 (+18%) |
| 総ページビュー数 | 15,034 | 17,220 | +2,186 (+15%) |
| 販売売上 | $82,060.84 | $89,569.49 | +$7,508.65 (+9%) |
| エンタープライズ向けサブスクリプション | $290.70 | $290.70 | 0 |
| ロイヤリティ | $2,369.08 | $2,597.71 | +$228.63 (+10%) |
| 総売上 | $84,720.62 | $92,457.90 | +$7,737.28 (+9%) |
| 利益 | $10,295.55 | $24,034.74 | +$13,739.19 (+133%) |
今月はすべての数値が上向いており、良い兆候です。まだTinyPilotの月ごとの変動の範囲内ではありますが、全体としては前向きな傾向が続いています。
閲覧数と売上の増加は、主に広告への投資を増やしたことによるものです。今後数ヶ月は、さらに多くのブロガーやYouTubeクリエイターにVoyager 2aを提供して、この投資を拡大していきたいと考えています。
25万ドルの現金をどう用意するのか?
TinyPilotの次の大きな課題は、自社での製造プロセスを外部の製造委託先へ移行することです。
5月のはじめ、数ヶ月にわたって話を進めてきた製造委託先から見積りが出ました。Raspberry Piを除くVoyager 2aの製造単価は約110ドルとのことでした。Raspberry Piは1台あたり45ドルなので、合計すると1台あたり約155ドルになります。
現在のコストは材料費が1台あたり約110ドル、そこに人件費が5ドルほどかかっています。つまり委託先に頼むと1台あたり40ドル(35%)のコスト増になりますが、それでも価値はあると感じました。委託すればオフィスを維持する必要がなくなり、原材料の在庫管理も不要になりますし、追加で人を雇わなくても簡単に生産規模を拡大できます。
110ドルという単価自体には納得していましたが、総額を計算して考えが変わりました。委託先からは最低2,000台の発注を求められました。110ドル × 2,000台で22万ドルです。
初回ロット分のRaspberry Piを含めると、この発注を支払うために約25万ドルの現金を用意する必要があります。
はっきり言って、これはいずれにせよ支払うお金です。昨年は原材料だけで33万4千ドルを使いましたが、1年を通して少額ずつ支払っていました。製造委託に切り替えると、材料費と製造費のほとんどをまとめて支払うことになりますが、半年から8ヶ月分を一括で支払うイメージです。
いったいどこで25万ドルの現金を用意すればいいのでしょうか。
ShopifyやAmazon、Mercuryからは、eコマース向け融資の案内がひっきりなしに届きます。そこで初めて詳細を読んでみました。月商の数倍を融資し、5〜15%の手数料を取ったうえで、完済まで売上の10〜20%を継続的に徴収するという仕組みでした。

Shopifyからは10万ドルの融資に対して手数料1万3千ドルという条件が提示されました。
仮にShopifyから10万ドルを借りると、手数料は1万3千ドルかかり、返済には約7ヶ月かかる計算でした。しかし、私が融資を必要とする期間はそれより短いはずです。月商は約9万ドルで、材料費と製造費をすべて支払い済みとすれば、月々の経費は約2万5千ドルに抑えられ、手元には毎月6万5千ドルが残ります。必要なのは1〜2ヶ月のつなぎなので、1万3千ドルは割高に感じました。
銀行から融資を受ける手もあると思いますが、かなり時間がかかり、書類も煩雑そうです。手数料も数千ドルはかかるでしょうし、そもそも2ヶ月だけの融資に応じてくれる銀行はまずないでしょう。
この状況で、少年時代の出来事を思い出しました。不動産開発業者が、私の大好きなコミュニティセンターを取り壊してショッピングモールを建てようとしていたのです。私のブレイクダンスチームが素晴らしいショーを披露したところ、来場者から20万ドルの寄付が集まり、コミュニティセンターを守るために必要な金額がちょうど集まったのでした。
昔のダンス仲間であるアルに電話して、TinyPilotのためにもう一度ブレイクダンスのショーをやらないかと持ちかけました。すると彼は、いら立ちを隠さずに、僕たちはブレイクダンスなんてまったく知らないし、それは80年代の映画Breakin’ 2: Electric Boogalooの筋書きそのままだと指摘してきました。

ブレイクダンスのショーで必要な資金を集められるだろうか?
というわけで、その案はボツになりました。
次の製造委託先との打ち合わせで、CEOに「一括で25万ドルを支払わずに済むような契約形態はないでしょうか。私にとってはほぼ1年分の経費に相当する金額なので」と相談してみました。すると彼は笑って、25万ドルを一度に支払うことを想定しているわけではないと説明してくれました。
実際には、委託先のほうで初期費用を立て替えてくれるとのことでした。1年以内に2,000台を購入するという注文書にサインさえすれば、取引は成立するというのです。
そこで、まずはVoyager 2aを約500台から始める予定です。そうなると委託先への支払いは約5万5千ドル、Raspberry Pi代が3万4千ドルで、前払いは合計9万ドルほどになります。かなり現実的な金額です。
製造委託への切り替えで収支はどう変わるのか?
25万ドルという数字を計算したときは、こうした一時的な大きな出費がTinyPilotの収支をどれだけかき乱すのかと少しパニックになりました。しかし、全額を前払いする必要はないとわかってからは、むしろ委託先への切り替えのほうが現行の体制より収支は良くなると考えるようになりました。
キャッシュフロー
TinyPilotの現行の体制では、材料費や製造費が数ヶ月、時には数年にわたって分散して発生しています。例えば2022年2月には、重要な電子部品を確保するために2万ドルを投じて備蓄しましたが、その在庫を今も使い続けています。2万ドルが14ヶ月以上も固定されたままということです。
電子部品の備蓄は回収までの期間が最も長い例ですが、TinyPilotでは他にも数ヶ月にわたって資金が拘束される支出が複数あります。金属製ケースは受け取りの3ヶ月前に30%を手付金として支払い、残りの70%は出荷準備が整った時点で支払います。ケースは一度に1,000個単位で届き、それをすべてデバイスに組み立てるのに3ヶ月かかります。つまり、ケースの費用を製品の販売で回収するまでに4〜6ヶ月かかることになります。
製造委託先の場合は、出荷から30日後に支払えばよいことになっています。材料費を支払ってから、完成品を販売して利益を得るまでの期間がずっと短くなります。注文した製品が1週間で倉庫に届けば、支払いまでに3週間近く販売期間を確保できることになります。
コストの把握
現行の体制では、TinyPilotのデバイス1台あたりにかかったコストを正確に把握するのが困難です。
例えば先ほど触れた2万ドルの電子部品の場合、生産の各段階で利用できる状態にするまでに、次のような追加費用がかかっていました。
| 費用 | コスト(記憶に基づく概算) |
|---|---|
| 部品を米国に輸入する際の関税 | $5,000 |
| 初期の試作のために部品をハードウェアコンサルタントへ送った送料 | $300 |
| 製造元へ送るために部品を棚卸しした際の人件費 | $750 |
| 部品を中国の製造元へ送る送料と、再度かかった関税 | $1,200 |
中国の製造元に届いた後は、部品を基板(PCB)に組み立てる費用を支払いました。製造元は基板を米国に発送し、そこでもまた関税がかかりました。さらに、基板や他の部品をVoyager 2aに組み立てるための人件費もこちらで負担しています。
では、Voyager 2a 1台を作るのにいくらかかったのか?各段階でかかった費用を特定の部品ロットに紐づける仕組みがあれば計算できるはずですが、今の体制ではそこまで精密に追跡できるツールがありません。
製造委託に移行すれば、製造コストは次の3つの費用に集約されます。
- 製造委託先に支払う1台あたりの製造単価
- Raspberry Piの1台あたりの仕入れ価格
- 製造元からフルフィルメント倉庫までの送料
委託先の工場はベトナムにあり、米国ではベトナム製の電子機器に関税がかからないとされています。実際に輸入手続きを経験するまでは「とされています」と留保しておきますが、もし本当であれば大きなコストが一つ減り、コスト管理もさらにシンプルになります。
3PLベンダーの費用はいくらか?
TinyPilotの今年の主要プロジェクトの一つが、受注発送業務を自前の仕組みから外部の物流代行(3PL)ベンダーへ移行することでした。
TinyPilotの唯一の創業者として、私はとにかく時間に制約があります。3PLに切り替えることでTinyPilot内部で発生する業務の複雑さを減らせるため、ぜひ移行したいと考えていました。価値に見合う金額として、3PLには1件あたり20ドル程度かかるだろうと予想していましたが、実際はもっと安く済みました。
3PLにすべての注文を任せた最初の1ヶ月の費用内訳は次のとおりです。
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| TinyPilotから3PLへの在庫の発送 | $560 |
| 倉庫保管料 | $28 |
| ソフトウェア利用料 | $45 |
| 入荷検品にかかった時間 | $288 |
| ピッキング作業 | $336 |
| 連絡対応 | $72 |
| 決済手数料 | $10 |
| 合計(送料・梱包資材を除く) | $1,585(1件あたり$8.86) |
| 梱包資材 | $223 |
| 送料 | $2277 |
| 合計 | $4,085(1件あたり$22.82) |
送料と梱包資材は分けて記載しています。いずれにせよ発生する費用だからです。3PL経由だと15%(1件あたり約1ドル)の上乗せがあるため、わずかに割高になっています。
合計すると、送料と梱包資材を除く3PLのコストは1件あたり約9ドルで、想定より安く収まりました。自社で対応するよりは割高ですが、オフィスが不要になれば月750ドルほどの経費を削減できるので、それに近づけます。
3PLを使うことで、キャッシュフローも少し改善します。自社で発送していたときは、梱包資材を事前に購入し、人件費と送料は発生のたびに支払っていました。3PLでは月末に請求書が届き、支払いは1ヶ月後で済みます。つまり、3PLが5月1日に処理した注文については6月30日に支払えばよいので、手元に現金を長く置いておけるのです。
サイドプロジェクト
WanderJestのポスター生成機能
2020年初頭、WanderJestという、コメディファンがライブコメディを見つけやすくするためのサービスを立ち上げました。新型コロナの影響で一度クローズしましたが、ここ数ヶ月は週末に少しずつ手を加えています。
ライブコメディの公演情報を掲載するうえでの課題は、作業が手間のかかることでした。公演の主催者はたいていFacebookやEventbriteなどで告知しますが、どちらのプラットフォームも自動的にデータを取得するツールを積極的にブロックしています。そのためWanderJestに情報を載せるには、他のプラットフォームを見て詳細を手作業でコピーする必要がありました。
そこで、コメディアン自身に公演情報を入力してもらえるようにしたいと考えました。余計な手間であれば誰もやってくれません。そこで、コメディアンがすでにやっている作業をWanderJestでより楽にし、その副産物として公演情報を取得できないかと考えるようになりました。
コメディアンがSNSで、今後の出演予定を一覧にした画像を投稿しているのをよく見かけます。

見たところ、汎用の画像編集ツールを使って手作業で作っているようです。公演内容が変わると、以前の画像の上に雑に編集を重ねていることもあり、おそらく元のデータを編集して作り直す手段がないのだろうと推測できます。
そこで、こうした画像を作るための専用ツールを作ることを思いつきました。データを保存しておけるので、後から編集して、予定が増えるたびに更新した画像を生成できます。
汎用ツールより使いやすく、仕上がりも良ければ、コメディアンはこのツールを使ってくれるはずです。WanderJestへの流入にもつながりますし、WanderJest側も公演情報を得られるようになります。
ある土曜日にブラウザAPIの<canvas>要素について学び、試しにプロトタイプを作ってみました。
WanderJestのコメディアン向けポスター生成機能のデモ
面識が2〜3回あり、以前からこうした画像を投稿しているのを見かけていたコメディアンが一人いたので、Facebookでメッセージを送ってツールを見てもらいました。「素敵ね!」と言ってくれたのですが、翌日、彼女はまた汎用の画像編集ツールで作った出演予定の画像を投稿していました…。
というわけで、まだ採用してくれた人はいませんが、諦める前に何人かのコメディアンにもう少し試してみようと思っています。
まとめ
できたこと
- 新しいTinyPilotメンバーをオンボーディングしました。
- 3名のYouTubeクリエイターにTinyPilotについて声をかけました。
- Fly.io上でSyncthingをデプロイするチュートリアルを公開しました。
学んだこと
- 外部ベンダーに切り替える際は、コストとキャッシュフローの両方への影響を考えることが大切です。
- 3PLではコストは上がりましたが、キャッシュフローはやや改善しました。
- 製造委託では製造コストの変動が大きくなりますが、キャッシュフローは大幅に改善します。
来月の目標
- 新しい製造委託先で製造ロットを開始する。
- TinyPilot Pro 2.6.0をリリースする。
- 売上9万5千ドルを達成する。
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