TinyPilot: 16ヶ月目
一言でいうと
TinyPilot Cloudの失敗
ハイライト
- 新製品を発表したものの、それが間違いだったと気づきました。
- TinyPilotのウェブサイトをシンプルにして、主力デバイス1つに絞りました。
- TinyPilotから離れて初めてまとまった休暇を取ってみましたが、結果はまちまちでした。
目標の達成度
毎月のはじめに、その月に達成したいことを宣言しています。結果は次のとおりでした。
現地スタッフがカスタマーサポートを担えるようにする
- 結果: 現地スタッフがサポートメールの約50%に対応しています。
- 評価: A-
現在、共有のカスタマーサポートキューとしてHelpScoutを使っています。文脈や技術的な背景が必要で私にしか対応できないケースもまだ多くありますが、それ以外は手伝ってもらえて助かっています。
緊急性の高い問い合わせで自分がクリティカルパスから外れられたのも大きな収穫でした。たとえば、顧客が注文した直後に配送先住所を間違えたと連絡してくるケースです。HelpScout導入前は、顧客とTinyPilotのフルフィルメント担当者の間で私がメッセージを取り次いでおり、対応が遅れることも少なくありませんでした。今ではフルフィルメント担当者がリクエストを直接受け取り、私を介さずに対応できています。
TinyPilotを補完する月額サービス型ソフトウェアの開発を始める
- 結果: ユーザーの反応が芳しくなかったため、開発を一時中断しました。
- 評価: C-
TinyPilot Cloudというサービスのプレビューを公開し、早期アクセスの申し込みを受け付けました。ユーザーからの関心が十分に集まらなかったため、現在はプロジェクトを中断しています。
TinyPilotのウェブサイトのリブランディングを完了させる
- 結果: もう少しで完了ですが、まだ終わっていません。
- 評価: B-
リブランディングは想定より時間がかかっていますが、11月には公開できるはずです。新しいデザインはとてもかっこよく仕上がっているので、公開するのが楽しみです。
TinyPilotの数値
| 指標 | 2021年9月 | 2021年10月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| ユニーク訪問者数 | 9,960 | 6,898 | -3,062 (-31%) |
| 総ページビュー | 15,744 | 13,008 | -2,736 (-17%) |
| 販売売上 | $42,234.17 | $34,927.55 | -$7,306.62 (-17%) |
| 法人向けサブスクリプション | $48.00 | $48.00 | 0 |
| ロイヤリティ | $3,431.35 | $6,804.53 | +$3,373.18 (+98%) |
| 総売上 | $45,713.52 | $41,780.08 | -$3,933.44 (-9%) |
| 利益 | $11,713.04 | $1,936.22 | -$9,776.82 (-83%) |
TinyPilotは今月も比較的好調でした。売上は先月よりやや下がりましたが、欧州の販売代理店が9月から売上を倍増させ、良い追い風になりました。
売上があるにもかかわらず利益が先月より低いのは、開発コストが例外的に11,000ドルかかったためです。さらにリブランディングのデザインコンサルティングに5,000ドル使いましたが、こちらはあと2〜3ヶ月で終わる一時的なコストです。
TinyPilot Cloudの失敗
ユーザーから最もよく寄せられる要望の一つが、インターネット経由でTinyPilotデバイスにアクセスしたいというものです。いくつかサードパーティ製の解決策はありますが、どれも動作が遅かったり使い勝手が悪かったりします。
そこで自然に生まれたのがTinyPilot Cloudのアイデアでした。デバイスへのシンプルで高速なクラウドアクセスを提供する有料サービスです。他のKVM over IPデバイスでこれをネイティブに提供しているものはなく、大きなセールスポイントになります。このサービスは、パフォーマンスとセキュリティを保ちつつ、すべてをとことんシンプルにするというTinyPilotのブランドにも合致します。何より、eコマースのような売上の波が激しいビジネスではなく、安定した継続収入をもたらしてくれるはずでした。
オープンソースのツールやクラウドベンダーを活用すれば、TinyPilot CloudのMVP(最小限の製品)を約1ヶ月でデプロイできると見積もっていました。他のTinyPilot開発者と協力し、Wireguardとfly.ioを使ったシンプルな概念実証を作りました。想定より苦労はしましたが、既存のサードパーティ製クラウドアクセス手段よりはるかに快適に動作しました。
基本的なプロトタイプができたので、要件定義書を書き、TinyPilotのシニア開発者に設計書への落とし込みを依頼しました。これも二人で想定していた以上に難航しました。認証プロバイダーを評価し、セキュリティと使いやすさのバランスを取った複雑なセットアップフローを設計する必要があったからです。
設計作業の一環として、シニア開発者がユーザーフローのモックアップ用スクリーンショットを作成しました。それらを含めたティザー記事をブログに投稿し、TinyPilot Cloudの早期アクセス登録を呼びかけました。

TinyPilot Cloudについて公開したティザー記事
TinyPilotのメーリングリスト登録者450名に告知を送りました。そのうち94名がリンクをクリックしてくれたので、コンバージョン率としては有望に感じられました。
2日経っても、TinyPilot Cloudのウェイティングリストに登録してくれたのは2名だけでした。TwitterやReddit、TinyPilotのユーザーフォーラムでも共有した後の数字です。

ティザー記事公開から2日経っても、TinyPilot Cloudの早期アクセスに登録したのは2名だけでした。
2件というのは期待を大きく下回っていました。50件ほどの登録があり、そのうち25件が実際の顧客になって月750ドル程度のスタートを切れるだろうと見込んでいました。TinyPilotを積極的にフォローしてくれている層の中でさえ興味を示したのが2人だけというのは、明らかに何かがおかしいということでした。
登録してくれたユーザーに連絡して、彼らのような顧客をどう見つければよいか学ぼうとしましたが、反応はあまり前向きではありませんでした。1人は私のメールに返信すらなく、もう1人は好奇心で登録したものの、実際にサービスを使うかどうかはわからないとのことでした。
他のユーザーからはコストへの懸念の声が上がりました。クラウドアクセスに月30ドルは高く感じるというのです。大口の顧客は価格にはそれほど敏感ではありませんでしたが、社内ネットワークを外部サービスに公開することには抵抗がありました。
多くの時間をかけたものが、そもそもユーザーに求められていなかったとわかり、落胆し恥ずかしくも感じました。結局、このプロジェクトには延べ6〜8人週の開発時間を費やしました。エンジニアリングに何ヶ月も投資する前に顧客の需要を検証するのは、起業のイロハのようなものです。
振り返ってみると、動く製品を作ることから始めるのではなく、まずブログ記事を出して関心を測ることだけを目標にすべきでした。失敗の原因は、ユーザーが「クラウドアクセスが欲しい」と言うことと、「それに月30ドルを払う意思がある」ことを同一視してしまった点にあります。この分野の既存プロバイダーは小規模事業者や個人ユーザー向けに無料でサービスを提供しているため、月30ドルは意外に高く映ったのだと思います。
当面、TinyPilot Cloudの開発は中断します。設計作業はしっかり文書化してあるので、顧客がもっと見つかれば数ヶ月後に再開できます。あるいは、顧客自身がセルフホストできるオープンソース版として公開する可能性もあります。
製品を1つに絞る
私が最初に提供したTinyPilot製品は、TinyPilot Hobbyist Kitでした。カスタムハードウェアやケースを用意する前、市販の部品を組み合わせて私が最初に作ったのと同じTinyPilotを顧客自身が組み立てられるキットとして販売していました。TinyPilotが進化し、ハイエンドモデルのTinyPilot Voyagerを追加した後も、価格を抑えたい顧客向けにHobbyist Kitの提供を続けていました。

今月提供を終了したTinyPilot Hobbyist Kit
9月からデザイン会社とTinyPilotのリブランディングに取り組み始めました。「TinyPilotはどんな顧客に響くべきか」と聞かれたとき、私は「中小企業とテックに詳しい一般消費者」と答えました。
その会話の後、Hobbyist Kitがその目標の妨げになっているのではないかと考え始めました。高品質なTinyPilot Voyagerの隣に安価なDIYデバイスが並んでいると、Voyagerは自分でも作れるものの少し良い版に過ぎない、という印象を与えかねません。

Hobbyist Kitと並ぶと、TinyPilot Voyagerは安っぽく見えないだろうか?
さらに事態を複雑にしているのが、Raspberry Piの品不足です。新規注文の待ち時間は6ヶ月以上にのぼります。半導体不足が解消する前に在庫が尽きる可能性もあり、貴重なRaspberry Piを350ドルの製品ではなく190ドルの製品に使うのは得策ではないように思えました。
月の半ばに、Voyagerに集中するためウェブサイトからHobbyist Kitを撤去しました。

製品ページからTinyPilot Hobbyist Kitを削除しました
その方がすっきりしました。KVM over IPデバイスが欲しい顧客にとって、選択肢は明確になりました。Hobbyist KitとVoyagerを比較検討し、プラグアンドプレイの手軽さや高画質のために追加料金を払う価値があるか悩む必要がなくなったのです。
そこで「なぜここで止めるのか?」と考えました。他の製品は本当に必要でしょうか。TinyPilot Proへのアップグレードは通常、ウェブサイトではなくTinyPilot本体のダッシュボードから直接購入されています。DIY派向けの電源コネクタも提供は続けたいですが、メインの製品ページに載せる必要はありません。そう考えると、そもそも製品一覧ページ自体が不要だと気づきました。
アクセサリ類を削ったことで、TinyPilotのウェブサイトをフラッグシップ製品であるVoyager中心に絞り込むことができました。

現在のTinyPilotウェブサイトでは、Voyagerという単一の製品のみを提供しています
製品を1つに絞ることには多くの利点があります。カスタマーサポートの複雑さが減り、在庫の保管スペースにも余裕が生まれ、注文のフルフィルメントプロセスもシンプルになります。
変更後、売上は伸びていますが、因果関係があるかどうかは判断が難しいところです。変更後に右肩上がりの傾向は確かにありますが、先月の好意的なメディア露出の遅効的な効果かもしれません。

過去90日間のTinyPilot総売上
Voyager 2は1〜2ヶ月以内の出荷に向けて順調に進んでいます。当初の計画ではVoyager 1と2を並行販売してそれぞれの価格を試すつもりでしたが、単一製品の販売がいかに楽かを実感したので、後継機の出荷開始後まもなくVoyager 1は段階的に終了させる予定です。
試しに休暇を取ってみる
今年の目標の一つは、TinyPilotの業務運営を十分に仕組み化して、2週間の休暇を取れるようにすることでした。これまであまり試してこなかったのは、世界的なパンデミックの最中に旅行する気になれなかったからです。ワクチンが普及したことで、最近いくつか旅行に出かけました。
8月には友人の結婚式に出席するため3連休を取りました。これは金曜日を1日休んだだけなので、大きな問題が起こる余地はほとんどなく、滞りなく進みました。
先月はもう少し踏み込んでみました。平日3日+週末の5日間の旅行です。仕事のメールは基本的に見ないようにしましたが、緊急の用件がないか数回ざっと確認はしました。戻ってみると、現地スタッフが問題なく注文の発送や在庫管理をこなしてくれていましたが、仕事用受信箱には122通の未読メールが溜まっていました。帰国後は3日間ほぼメールの返信だけで終わり、正直あまり楽しいものではありませんでした。
この問題をどう解決すればよいか、まだ良い案はありません。根本的な問題は、TinyPilotというビジネスに関わる要素が非常に多いことです。私自身、現地スタッフ2名、開発者3名、欧州の販売代理店、3Dプリントの工房、電気設計のベンダーと、毎週のように全員とやり取りしており、調整事項が膨大なのです。
できる限り仕組み化と文書化を優先していますが、どうしても私の対応が必要な例外的なケースは常に出てきます。さらに、販売に関する問い合わせやカスタマーサポートの依頼もあり、最近は現地スタッフが一部を引き受けてくれているとはいえ、まだ負担は残ります。
今年の初めにWPEngine創業者のJason Cohen氏のインタビューを聞いたのですが、その中で「優れたリーダーであることの一部は、周りの人々が成長し、より多くの責任を担えるよう支援することだ」という話がありました。この言葉は心に残り、ビジネスを数週間自分なしでも回るように成長させるための最良の希望だと感じています。開発者同士でコードレビューができるようにしたことで、開発チームは成長し、より自律的に動けるようになりました。現地スタッフをカスタマーサポートのプロセスに組み込んだことでも、同様の効果を期待しています。
最後に、例外的だった問題が時間とともに例外ではなくなっていくことを期待しています。私の介入が必要な状況というのは、通常、その対応プロセスが定義されていないからこそ発生します。そしてプロセスがないのは、これまで一度も起きたことがなかったからです。TinyPilotはまだ比較的若い会社です。開発チームが発足したのは8ヶ月前、オフィスを構えてからは6ヶ月、初の販売代理店が加わったのも2ヶ月前のことです。新しい驚きの割合は時間とともに減り、ほとんどの状況に対して文書化された一貫したプロセスで対応できるようになるはずだと考えています。
過去のプロジェクト
ここでは、現在も維持はしているものの、開発の主軸ではないプロジェクトについて簡単に近況を報告します。
Is It Keto
| 指標 | 2021年9月 | 2021年10月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| ユニーク訪問者数 | 23,618 | 20,321 | -3,297 (-14%) |
| 総ページビュー | 56,246 | 47,487 | -8,759 (-16%) |
| ドメインレーティング(Ahrefs) | 11.0 | 11.0 | 0 |
| AdSense収益 | $264.63 | $230.64 | -$33.99 (-13%) |
| Amazonアフィリエイト収益 | $77.42 | $27.76 | -$49.66 (-64%) |
| 総収益 | $342.05 | $258.40 | -$83.65 (-24%) |
Is It Ketoは、競合サイトが検索結果で上位を占める中、緩やかに下降を続けています。残念ですが、TinyPilotから注力を移す価値はありません。
Hit the Front Page of Hacker News
| 指標 | 2021年9月 | 2021年10月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| ユニーク訪問者数 | 128 | 100 | -28 (-22%) |
| Gumroad収益 | $189.14 | $75.27 | -$113.87 (-60%) |
| Blogging for Devs収益 | $27.30 | $0.00 | -$27.30 (-100%) |
| 総収益 | $216.44 | $75.27 | -$141.17 (-65%) |
ブログ講座の宣伝は何もしていませんが、先月も数名の方が購入してくれました。先日共同主催したインディーファウンダーのミートアップでは、参加者の一人が私の講座を受講してくれていたので、受講生にリアルで初めて会えて嬉しかったです。
Zestful
| 指標 | 2021年9月 | 2021年10月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| ユニーク訪問者数 | 596 | 613 | +17 (+3%) |
| 総ページビュー | 1,512 | 1,426 | -86 (-6%) |
| RapidAPI収益 | $185.12 | $99.74 | -$85.38 (-46%) |
| 総収益 | $185.12 | $99.74 | -$85.38 (-46%) |
Zestfulは裏側で相変わらず稼働を続けています。ここ数ヶ月は月100〜600ドルの収益があり好調です。売上は、継続的なニーズを持つ顧客というよりも、一括で大量のパース処理を行うユーザーから来ているのではないかと見ていますが、嬉しい上乗せ収入になっています。
Zestfulの買収に関心を示していた方からは、その後連絡が途絶え、メールにも返信がないので、この話は立ち消えになったようです。
まとめ
できたこと
- 現地スタッフをカスタマーサポートのワークフローに組み込みました。
- TinyPilot Cloudの開発を中断しました。
- TinyPilot Hobbyist Kitを終了し、サイトをVoyager中心に絞りました。
- 「Deliberate Programming」のエピソード1を公開しました。
- ソフトウェア開発に意図的練習(deliberate practice)をどう応用できるかを探るプロジェクトを始めました。
学んだこと
- プロダクトは早めに検証すること。
- 機能やプロダクトが欲しいと思うことと、そのためにお金を払う意思があることは別物です。
- 休暇を取りたいなら、チームメイトの成長を支援しなければならない。
- チームメイトがより多くの責任を担うほど、ビジネスが私個人の日々の業務に依存しなくなります。
来月の目標
- TinyPilotのウェブサイトのリブランディングを完了させる。
- ハードウェアの準備が整い次第、Voyager 2の発売に備える。
- マーケティング会社やフリーランサーに依頼し、TinyPilotの有料マーケティングチャネルの開拓を支援してもらう。
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