Nonviolent Communication by Marshall B. Rosenberg, Ph.D.

Michael Lynch

マーシャル・B・ローゼンバーグ博士著『Nonviolent Communication ― 非暴力コミュニケーション』

Nonviolent Communication(非暴力コミュニケーション)は、自分の弱さを分かち合い、相手に共感を差し出すことを中心に据えたコミュニケーションのスタイルを解説しています。本書の大きな強みは、自分の感情や批判的思考をないがしろにしてしまう、安易な話し方のパターンを鮮やかに浮き彫りにしている点にあります。共感についての考察も示唆に富んでおり、共感的に耳を傾ける力をどう高められるかに気づかされました。

特に印象に残ったのは、「〜しなければならない」と口にすることがいかに日常化しているかという指摘です。本当に「しなければならない」のか、なぜそう感じるのかを考えずにそう言ってしまっていることが多いのです。本書を読んでからは、「このメールを書かなければならない」といった言い方を避けるようにしています。そう表現すると、メールを書くと自分で選んだのだという事実から不必要に切り離されてしまうからです。

「〜しなければならない」と「〜したいから、〜することを選ぶ」の違いは、当初は些細に思えました。しかし考えれば考えるほど腑に落ちていきました。今では基本的に「〜したい」という言い方をしています。やりたくないことであれば、それが最終的に望むことへ至るための中間ステップなのか、それともそもそも不要なことなのかを検討するようにしています。

本書はCrucial Conversations(クルーシャル・カンバセーションズ)と共通点が多くあります。どちらも、緊迫した会話において評価と事実を切り離すことの重要性を強調しています。また、すべての人が安心して、きちんと耳を傾けてもらえていると感じられるようにすることを提唱している点も共通しています。

Nonviolent Communicationは、弱さや感情に焦点を当てるぶん、やや柔らかく曖昧な印象があります。一方でCrucial Conversationsはより臨床的で、プロセス重視です。両書ともあらゆる場面で手法を使うことを勧めていますが、私自身はCrucial Conversationsは仕事上の関係に、Nonviolent Communicationは友人や大切な人との関係に向いていると感じています。


良かった点

  • 選択の余地がない、無力であるかのような言葉を、いかに無自覚に使っているかを指摘している点:
    • 例:「このメールに返信しなければならない」「あなたのせいで私は腹が立った」
    • 自分の選択や、他者への反応に対する責任を引き受けるという考え方に共感しました。
  • 大切な人とのコミュニケーションを改善するうえで、多くの考え方が役に立ちました。
  • 相手が落ち込んでいるときに、どう共感し、慰めようとしてきたかを考え直すきっかけになりました。

いまいちだった点

  • 本書が推奨する「聞いたことをそのまま返す」傾聴のスタイルが、やや芝居がかって感じられました。
    • A:「今日は最悪の一日だ!」
    • B:「一日が思い通りにいかず、気が滅入っているように聞こえます」
  • 事例として紹介されるエピソードの多くが、大げさで現実離れしているように感じられました。
    • 例:著者が凶暴なギャングのメンバーを前に講演し、自分が彼らを恐れていると率直に伝え、なぜ自分を真剣に受け止めてくれないのかと問い続けたところ、最後には彼らから「今までで最高のスピーカーだ」と称賛されたという話。
  • 例文の会話の文法が不自然で、英語を母語としない人が書いたように読める箇所がありました。
    • 例:「私は私たちの対話においてより多くの敬意を必要としています」
  • 後半は、前半の考えを実践した人々の物語が中心で、あまり興味を引かれませんでした。
  • 著者が、自身や仲間のセラピストが作詞した歌の歌詞を引用するのが好きなのですが、個人的にはあまり響きませんでした。

要点まとめ

非暴力コミュニケーション(NVC)

非暴力コミュニケーション(NVC):心から与えることへと導くコミュニケーションのあり方。

  • NVCは、自分の感情に目を向け、評価を差し控えることで、より思慮深く対話する方法です。
  • NVCのプロセス:
    1. 自分の気分に影響を与えた具体的な出来事を観察する。
    2. その出来事に関連して自分の中に生じた感情を特定する。
    3. その感情を、自分のニーズや価値観、願望に立ち戻ってたどる。
    4. 自分のニーズを満たすために、相手に具体的な行動を要請する。

評価的な思考

  • 「彼女は怠け者だ」「彼は理不尽だ」といった評価で考えると、本当の問題が自分の満たされないニーズにあるにもかかわらず、他者に責任を押しつけてしまいます。
    • 評価的な言葉は、問題から自分を切り離し、自分が抱えている感情への責任から逃れることを可能にしてしまいます。

「選択の余地がない」かのような言葉遣い

  • 人はしばしば「〜しなければならない」「〜する必要がある」といった形で選択を語ります。
    • この言い方は、実際には自発的に選んでいるにもかかわらず、話し手が自ら選んで行動しているわけではないかのような印象を与えます。
  • アドルフ・アイヒマン(ナチス将校)の裁判では、ナチスが残虐行為について「アムトスシュプラーヘ(役所言葉・官僚言葉)」で語っていたことが明かされました。
    • なぜ戦争犯罪を犯したのかと問われると、ナチスは「やらねばならなかった」といった答えを返したといいます。
  • 責任を否認する言葉の例:
  • 曖昧で非人格的な力 ― 「やらなければならなかったから部屋を掃除した」
  • 自分の状態、診断、個人的・心理的な来歴 ― 「アルコール依存症だから酒を飲む」
  • 他者の行動 ― 「子どもが道路に飛び出したから叩いた」
  • 権威の命令 ― 「上司に言われたからクライアントに嘘をついた」
  • 集団の圧力 ― 「友達がみんな吸っていたから吸い始めた」
  • 組織の方針、規則、規制 ― 「校則だから、この違反で停学にしなければならない」
  • 性別、社会的役割、年齢による役割 ― 「仕事に行くのは嫌いだが、夫であり父親だから行く」
  • 抑えられない衝動 ― 「キャンディバーを食べたい衝動に負けてしまった」
  • 個人の主体性を小さく見せるこうした話し方は、階層的な社会に生きることの副産物かもしれません。
    • 少数の人々が多数を支配する社会では、市民が「選択の余地がなく無力である」ことを示唆する言葉で語るほうが、支配層にとって都合がよいのです。

共感を妨げる言葉

  • 「〜に値する(deserves)」という言葉は、しばしば話し手の共感を妨げます。
    • 例:「彼は罰せられるべきだ
    • 「値する」という表現は、対象に悪の属性を与え、共感に値しないと思わせてしまいます。

観察と評価を切り離す

  • 人は、主観的な意見や評価に基づくフィードバックよりも、客観的で反論の余地のないフィードバックのほうを受け入れやすくなります。
    • フィードバックの中の客観的な部分と主観的な部分を分けて伝えることができます。
コミュニケーションの類型観察と評価が混在した例観察と評価を分けた例
評価しているのが自分であることを示さずにbe動詞を使う場合あなたは寛大すぎる。あなたが昼食代をすべて人にあげているのを見ると、あなたは寛大すぎると思います。
評価的な含みを持つ動詞を使う場合ダグはぐずぐず先延ばしにする。ダグは試験の前夜にしか勉強しない。
他者の思考・感情・意図・願望についての自分の推測が、唯一可能なものであるかのように示す場合彼女は課題を提出しないだろう。彼女は課題を提出しないと思います。

または

彼女は「課題は提出しない」と言いました。
予測と確実性を混同する場合バランスの取れた食事をしなければ、健康を損なうことになる。バランスの取れた食事をしなければ、健康を損なうのではないかと心配です。
指し示す対象を具体的にしない場合移民は自分の所有物を大切にしない。ロス通り1679番地に住む移民の家族が、歩道の雪かきをしているところを見たことがありません。
能力を表す言葉を、評価であることを示さずに使う場合ハンク・スミスは下手なサッカー選手だ。ハンク・スミスは20試合連続でゴールを決めていません。
形容詞や副詞を、評価であることを示さずに使う場合ジムは醜い。ジムの容姿は私の好みではありません。

「いつも」「決して」「しばしば」「めったに」といった言葉は、しばしば評価を伴います。

  • 評価:あなたはめったに私の望み通りにしてくれない。
  • 観察:私が何かを提案した直近の3回、あなたは「やりたくない」と言いました。

感情を表現して絆を深める

  • 弱さや感情を表現すると、相手はあなたとのつながりをより強く感じます。
    • 自分の感情を具体的に言葉にすると、コミュニケーションはより強くなります。
    • 例:「気分がいい」よりも「わくわくしている」と言うほうが伝わります。

自分の感情に責任を持つ

  • 他者の行動は、私たちの感情のきっかけにはなっても、原因ではありません。
  • 私たちの感情は、自分自身の選択やニーズ、期待の結果として生じるものです。

他者からの否定的なフィードバックに対する四つの反応

  1. 自分を責める:相手の評価を受け入れ、自尊心を傷つけます。
  2. 他者を責める:話し手を非難して批判を拒絶します。
  3. 自分のニーズと感情を感じ取る:聞いた批判に対して自分がどんな感情を抱いているかを観察します。
  4. 他者の感情とニーズを感じ取る:話し手のどんなニーズを満たせなかったのかを理解しようと探ります。

感情への個人的な責任を曖昧にする話し方のパターン

  • 「それ(it / that)」のような非人称的な言葉
    • 「パンフレットに誤字があると本当に腹が立つ」
    • 「あれには本当にうんざりする」
  • 「私は〜だから、〜と感じる」
    • 「あなたが愛していないと言ったから傷ついた」
  • 他者の行動だけに言及する言い方
    • 「誕生日に電話をくれないと、傷つく」

これらの話し方は、自分の感情と、その背後にあるニーズを結びつけることで修正できます。

  • 次の形式を使います:「私は[感情]と感じる。なぜなら[根底にあるニーズ]だからだ」
  • 例:
    • 「パンフレットのような公的な印刷物に誤字があると、本当に腹が立ちます。なぜなら会社がプロフェッショナルな印象を与えてほしいと思っているからです」
    • 「上司が約束を破ったことに腹が立っています。なぜなら兄に会うために連休を当てにしていたからです」

望みは肯定的な言葉で伝える

  • 自分の望みを肯定的な行動の形で伝えると、相手から得られる可能性が高まります。
  • 人は往々にして自分が望まないことを口にしますが、それでは誤解やすれ違いの余地が広がります。
  • 何を求めているかを明確にすればするほど、それを得られる可能性は高まります。
  • 会議やグループでの議論では、自分がどんな反応を期待しているのかをあらかじめ考えずに発言し、結果として時間を無駄にしてしまうことがよくあります。

要請と要求の違い

  • 要請と要求の違いは、相手が応じなかったときに話し手がどう振る舞うかにあります。
    • 話し手が非協力に対して罰を与えるなら(罪悪感を抱かせることや愚痴も含みます)、それは要求でした。
    • 相手の拒否を快く受け入れられるなら、それは誠実な要請でした。
  • 相手が要請に応じなかったときに罰を与えることを習慣にすると、相手は要請を要求として解釈するようになります。
    • そうなると、相手は恐怖から従うか、反発するかのどちらかになります。
  • はっきりと望みを伝えたうえで相手がそれに応じないことを選んだときは、その答えを快く受け入れることが大切です。そうしないと、自分のあらゆる望みを満たすよう相手に強制している関係になってしまいます。

共感的に受け取る

  • 人は、相手の感情を聞くときに、十分にその場に居合わせることができていないことがよくあります。
  • 真の共感をもって聴くことを妨げる典型的なパターン:
    • 助言する:「〜すべきだと思う」「どうして〜しなかったの?」
    • 優位に立つ:「そんなのたいしたことないよ。私に起きたことを聞いたら…」
    • 教育する:「こうすれば、あなたにとってとても良い経験になるはずだよ…」
    • 慰める:「あなたのせいじゃないよ。ベストを尽くしたんだから」
    • 自分の話をする:「それで思い出したんだけど…」
    • 打ち切る:「元気出して。そんなに落ち込まないで」
    • 同情する:「まあ、かわいそうに…」
    • 詰問する:「それはいつ始まったの?」
    • 釈明する:「電話しようと思ったんだけど…」
    • 訂正する:「実際はそうじゃなかったよ」
  • 共感的に聴くには、話し手が次の何を語っているのかを捉えます:
    1. 観察していること
    2. 感じていること
    3. 必要としていること
    4. 要請していること
  • この四つを引き出す一つの方法は、推測を口にして、相手に当たっているか確認することです。
    • 「話をきちんと聞いてほしくて、気が滅入っているのですか?」
    • 「先週、私が何晩も外出していたことに反応しているのですか?」

共感をもって自己評価する

  • 自己評価をするときにも、自分自身への共感を働かせるべきです。
    • 自己評価が恥の感情につながる場合、成長し改善することはあっても、自己嫌悪に駆り立てられていることになります。
    • そうではなく、自己評価の言葉を内なる要請へと訳し直してみましょう。
  • 一般に、「〜すべきだ」「〜すべきではない」と言うとき、その裏には、自分の行動がニーズや価値観とずれているというメッセージがあります。
    • 恥を抱かせる言い方(望ましくない例):「あのドーナツを食べるべきではなかった」
    • 根底にある価値観を特定する言い方(望ましい例):「ドーナツを食べて得られる一時的な快楽よりも、健康でいることのほうが私にとって優先度が高い」
  • 満たされなかったニーズを特定することは、自分を許し、恥の感情にとらわれ続けることを避ける助けになります。

罰を与えることの限界

  • 誰かに罰を与えようとするときは、自らに二つの問いを投げかけるべきです。

    1. この人に、今していることと何を違えてほしいのか?
    2. この人に、求めていることをする理由として、何を望むのか?
  • 例:子どもが部屋を片付けないから罰を与える

    • それは権威に従うことを教えますが、清潔さや整理整頓が本来持つ利点を理解する助けにはなりません。
  • 共感的な対話が、力や罰の行使に取って代わることがよくあります。

原文は Michael Lynch により に公開されました。

この記事は「muse-spark-1.2-contributor」を使用して翻訳されました。