ボールが(ほぼ)壁までぎっしり
原文は Marcin Wichary により に公開されました。 このブログを購読する
Nothing Phoneがボタンの入力をバッファしないという前回の投稿が、あることを思い出させてくれた。
こちらがIBM Selectric、1961年製のタイプライターだ。

過去の数十年は一点に圧縮されてしまいがちで、Selectricも「また昔のタイプライターか」くらいに思えてしまう。実際、詳しく知るまで私自身そう思っていた。だがSelectricが登場したのは最初のタイプライターから80年も後のことだ。ユーザーのためになる革新をこれでもかと詰め込み、まさに当時のiPhoneと呼べる存在だった。(残念ながら、それにふさわしい「伝わってる?」的な基調講演はなかったと思うが。)

Selectricは、正直なところ、エンジニアリングの金字塔だった。交換可能なタイプライターフォントを普及させ、優れたインダストリアルデザインを体現し、詰まりのないタイピングを可能にし、さらには――発売から10年後のことだが――文字を物理的に破壊して消すBackspaceまで発明した。何より重要なのは、登場したその日から打鍵感があまりにも素晴らしく、60年後の今私たちが使っているキーボードでも、多くのキーがSelectricが定めた位置のまま残っているということだ。
さらにすごいのは? Selectricが純粋に電気機械式だったということだ。ソフトウェアもなければ、チップも、電子回路もない。Selectricが成し遂げたことのすべては、鋼鉄とグリス、リンクとレバーという機械の言葉で表現されていたのだ。
ソフトウェアでは朝飯前だが、ハードウェアでは難しい問題がひとつある。どうやって2つのキーが同時に押されるのを防ぐか、という問題だ。
これはタイプライターが誕生した当初からつきまとってきた問題で、IBMのエンジニアたちは巧妙な解決策を考え出した。各キーは1本のバー(インターポーザー)につながっており、各バーには小さく突き出た突起(ラグ)があり、その突起が水平に並んだ小さな鋼球の列(セレクター・コンペンセイター・チューブ)にすとんと収まる仕組みだった。



鋼球の列には、ちょうど1つの突起が入るだけの遊びしかない。だから同時に2つ目のキーを押そうとしても、鋼球はぎっしり詰まった状態になり、2つ目の突起が入る隙間はなく、キー入力はブロックされてしまうのだ。
巧妙だなと思ったが、実際はそれ以上に巧妙だった。私のエッセイを読めば分かるように、あれは指の動きがオーバーラップするという考えから始まっている。片方の指が上がっていく途中で、もう片方の指はすでに次のキーを押し始めているのだ。最初のキー入力が完全に戻るまで2つ目の入力をすべてブロックしてしまえば、速く打つことなどできなくなってしまう――そしてSelectricはプロのためのタイピングツールであることが求められていたのだ。
ここで、精密にサイズを合わせ配置された鋼球という選択が効いてくる。実際には、2つ目のキー入力は完全にはブロックされなかったのだ。突起は隣り合う鋼球の間にほんの少しだけ滑り込むことができた。いわば半押し状態――つまり、実質的に半文字分のバッファである。重なり合うタイピングを妨げないように、しかし同時に2つのキーが押されるのは防げるように、絶妙に調整されていたのだ。
さて、Selectricがこれをやってのけたのだ。半文字分のバッファを作るためだけに、精密に加工された鋼球の小さな列を用意し、重量を増やし、将来の摩耗まで見越し、保守マニュアルに何ページも割かなければならないような世界でだ。そこまでして実現したのに、あなたの言い訳は何だ?
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