人にやさしい車
最高の安全評価(…)を得るには、ハザードランプ、方向指示器、フロントガラスのワイパー、SOS通報、ホーンを、ボタンやダイヤル、レバーで操作できる車でなければならない。
これが理にかなっていることに疑いの余地はない。念のため、Cliff KuangとRobert Fabricantによる『User Friendly: デザインの隠れたルールが、私たちの暮らし、働き方、遊び方を変えている(User Friendly: How the Hidden Rules of Design Are Changing the Way We Live, Work, and Play)』から、いくつか引用しておこう。
第二次世界大戦中、米空軍は驚くほど多くの墜落事故に直面していた。当初、事故の原因はパイロットのミスや訓練不足だと考えられていた。しかし、ポール・フィッツ中尉と心理学者のアルフォンス・チャパニスは、あるパターンに気づいた。多くの事故は、パイロットが翼のフラップを調整しようとして、誤って降着装置を格納していたために起きていたのだ。
2つはすぐ隣にあり、見た目もまったく同じだった。そのため、パイロットが飛行機を着陸させる際、フラップを操作するつもりで降着装置を格納してしまうのは、驚くほど簡単だった。
1940年から1942年にかけて、この設計上の欠陥によって457件の事故が起きた。チャパニスは、単純だが効果的な解決策を提案した。ノブの形状を変えることだ。降着装置の操作部を翼のフラップの操作部とは触ったときに違うものにすることで、パイロットは触覚だけで両者を見分けられるようになり、ミスを大幅に減らせる。
ここから得られる教訓は明快だ。素早く、しかも重大な結果を左右する判断をしなければならないとき、触覚によるフィードバックが重要になる。私たちは歴史からこれだけ多くを学んできたというのに、自動車メーカーは、直感的に使える物理的な操作部をタッチスクリーンに置き換え、ますます逆の方向へ進んでいる。この原則がいまやすべての飛行機に法的要件として求められているのなら、車も同じであるべきではないだろうか。
さらに、この考え方の名残は、身の回りにあるボタン、つまりキーボードやリモコン、車の中のボタン、さらにはスマートフォン上のデジタルボタンにまで見て取れる。どれも触っただけ、あるいは一目見ただけでわかるように、形がそれぞれ違っているのだ。
タッチスクリーンを使うには、目で見る必要がある。道路から目を離さずに、音量つまみを手探りで探したり、エアコンを調整したりすることはできない。非常に煩わしいだけでなく、重大な安全上のリスクでもある。遅いソフトウェアと同じように、タッチスクリーンは、本来は簡単に済むはずの重要な操作に余計な摩擦を加えてしまう。
私たちは今も、チャパニスが考案した、もう2つの基本的な解決策に囲まれている。1つ目は、滑走路上で不器用に飛行機を方向転換させていたパイロットのような事例をきっかけに生まれた、飛行機内のすべての計器を標準化された位置に配置することだ。2つ目は、操作部が「自然な」方向に動くようにすることだった。
操作部の配置を標準化し、自然な方向に動くようにすれば、認知負荷を減らせる。しかし自動車メーカーは、ミニマルなダッシュボードを追い求めるあまり、その両方を無視している。
これが実現するのが待ちきれない。
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